【特別対談】寺小屋グループ×ラブテリ

ラブテリ×寺小屋グループ対談

寺小屋グループ × ラブテリ
学力向上の新たな可能性!
学習塾と医療チームがタッグを組んだ新たな試み
「おやこほけんしつ」がスタート!


1979年に創業した寺小屋グループは、おかげさまで創業45周年を迎えました。創業以来、愛媛県の子どもたちの学力を伸ばすため、社内研修の実践や新学習システムの導入など、教育環境の変化に合わせた改革を進めてきました。一方で、共働き世帯の数はこの45年間で増加し続け、特にお母さんたちの負担が大きくなっています。寺小屋グループは、全国で母子の健康を支える活動を続けているLuvtelli(ラブテリ)の想いに共感し、2024年度から新たな試みとして寺小屋「おやこほけんしつ」をスタートします。この対談では、双方の代表が愛媛県の子どもたちの学力向上へ、新たな可能性や夢を語ります。

 教育活動を通して人と地域の未来を照らす~寺小屋グループのこれから

司会はじめに寺小屋グループ創業45周年を迎えるにあたり、ご挨拶をお願いします。

崎山まずは、これまで支えてくださった生徒さん、保護者の皆さま、関係企業の皆さまに御礼申し上げます。弊社は1979年に松山で第一号の教場を中学生を指導する塾としてスタートしました。当時は、第二次オイルショックの頃で、インベーダーゲームが大流行。教育業界では共通一次試験が始まった頃でした。1980年代からは日本の人口増加や好景気に合わせ学習塾の需要が増大し、寺小屋グループも対象学年や拠点エリアを広げてきました。現在は主に愛媛県を拠点に、小学1年生から高校3年生までの学習塾事業を展開。近年では、AIを活用した学習システムや英語を使いこなす力、プログラミングなど、時代の要請に応じた新たな取り組みを実践しています。創業当時から現在まで「教育活動を通して人と地域の未来を照らす」という理念に変わりはありません。私たちを選んでくださった皆さまに、当たり前のサービスとして短期的には学力の向上や志望校合格をサポートし、中長期的には社会で生きる力を身につけていただく。そこにどう寄り添っていくかが大事だと考え、そのために良いと思うことは積極的に取り入れていきたいと思っています。

 実体験から予防医学に興味を持ち渡米、母子健康の団体ラブテリを発足

司会ラブテリについて教えていただけますか。

細川私ども一般社団法人ラブテリトウキョウ&ニューヨーク通称ラブテリは、2009年にアメリカと日本の医療の専門家をチームにして立ち上げた団体です。もともとは、私が10代後半に母を末期ガンで亡くしたことから予防医療に興味を持ち、渡米したのがきっかけです。International Nutrition Supplement Adviser.の資格を取得後、健康食品会社で開発・広報部に所属。アメリカで「DOHaD-生活習慣病胎児起源説」と「最初の1000日」を知り、母子健康推進活動を目的としたプロジェクトチームを発足することを決意しました。現在は、ドクターや管理栄養士などの専門家が40名以上所属し、母親と子どもの健康に関するさまざまな課題解決に取り組んでいます。

司会アメリカで学ばれたという「DOHaD―生活習慣病胎児発症説」と「最初の1000日」とは、どういうものなのでしょう。

細川「DOHaD―生活習慣病胎児発症説」とは、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の原因をたどっていくと、妊娠中の母体の栄養状態にまでさかのぼるというもの。小さく生まれた子は将来的に糖尿病や心臓病、高血圧などの罹患率が高いということが研究で裏付けされています。また、低出生体重児の原因のひとつが女性の痩せ問題です。30年前にアメリカの教授から「この問題でいちばん深刻なのが日本だ」という話を聞いて、自分の国は豊かで女性も健康だと思っていたので非常にショックを受けました。
「最初の1000日」とは、脳の劇的なサイズアップが起こる時期であり、それにともない将来の学力、進学率、ひいては経済所得の基盤。そして、国の将来のGDPまでもが、妊娠中から2歳までの1000日間の栄養状態などに影響を受けるというものです。予防医療をやるのであれば、そこにしっかりと焦点を当てることが根本的解決につながるだろうと、母子の健康をサポートするラブテリを発足したわけです。

 女性と子どもの健康増進を叶える3つの事業「研究・啓蒙・協業」

司会ラブテリでは、具体的にどのような活動をされているのでしょう。

細川3つの事業を柱に活動しています。ひとつめは、研究。女性と次世代の健康に関する共同研究を複数手掛け、学会や論文、レポートで発表しています。妊娠適齢期の女性がどういう健康課題を抱えているのか、子どもたちがどのくらい栄養失調になっているのかなどのテーマを大学などと一緒に共同研究しています。ふたつめが啓蒙。女性と子どもたちに、自らの健康について理解し考えてもらい、病気にならない生き方を自分の力でつくってほしいと、食事・運動・睡眠に関する整え方を啓蒙・啓発しています。今回の寺小屋「おやこほけんしつ」もこの活動の一環です。三番目が企業や自治体との協業。研究データを解析し母子が抱えている健康リスクを還元することで、必要なソリューションを開発する事業です。全国の大企業や自治体と商品開発やアプリ開発などを行っています。愛媛の企業では、ユニ・チャームの生理用品「ソフィ」の生理管理アプリに開発協力し、生理のビッグデータ化による女性のQOL向上を目指しています。

 研究の成果から見えてきた深刻な母子貧血問題

司会ひとつめの事業の柱「研究」の成果は、どのようなものがありますか。

細川順天堂大学との「卵巣年齢共同研究」、女子栄養大学との「高崎妊婦共同研究」はじめ、働く女性の健康課題をまとめた「働き女子1000名白書」、子育て世帯3000世帯を対象に実施した「こどもすくよか白書」などを発表し、母子が抱える健康課題を顕在化してきました。その中で、私たちが新たな社会問題と認識しているのが母子貧血です。日本では、近年スリムな体型に憧れる女性が増え、やせ型が多く貧血になりやすい傾向に。特に、妊娠中に貧血状態であると、早産や低出生体重児などのリスクが高くなります。「最初の1000日」の研究結果からもわかるように、お母さんの貧血は赤ちゃんにも影響を与えます。

司会その他、現在進めている研究があれば教えてください。

猪川現在、自治体と共同して進めている例としては、熊本県長洲町の乳幼児健診で血中のヘモグロビン濃度を採血なしに測定できる機械を取り入れています。この測定結果から子どもの貧血の実態を把握したり、長期的に測定機会を作ることで貧血の割合の変化を見たり、子どもの貧血の原因を探るといったプロジェクトを、愛媛大学との共同研究として実施予定です。また、ヘモグロビン濃度を測定して貧血の可能性が高いと分かった子どもに対して、保護者を含めた効果的な介入方法を検討したり、企業に鉄が多く含まれる食品の提供を依頼するなど、産学官が連携してこどもの健康を支援するシステムを構築していく予定です。
そのほか、香川県善通寺市の国立病院機構「四国こどもとおとなの医療センター」では多数の小児科医の協力を得て、子どものビタミンD欠乏を採血なしにスクリーニングできる質問票を国内で初めて開発する研究を進めています。ビタミンDはカルシウムの吸収や骨の形成に重要な働きをするため、欠乏すると成長期の子どもでは身長の伸びに影響し、骨折しやすくなるなどとても大切な栄養素です。私は研究者ですので、これらの研究を全国に拡大して進め、研究成果を日本栄養士会や日本公衆衛生学会やメディアを通じて広く知っていただき、子どもの健康のための取り組みを全国に広げる一歩になればと願っています。

 「測って、知って、学ぶ」がコンセプトの「おやこほけんしつ」

司会啓蒙事業のひとつ「おやこほけんしつ」で目指していることを教えてください。

細川私どもの保健室にはいくつか種類があり、女性を対象にした女性向け保健室、企業内での保健室、そして「おやこほけんしつ」です。どれも自らの健康状態を「測って、知って、学ぶ」がコンセプト。これまでも学校や企業などの健康診断で測る機会はありましたが、女性や子どもという視点で十分にフィードバックされているかというと、なかなか難しい。実は、これまでの研究で0歳〜5歳までの子どもで貧血リスクに該当した子どもは12%いました。貧血リスクの高い子どもは少食で体力がない傾向があり、集中力や理解力の低下を引き起こすなど学力にも関係していることが分かっています。しかも、症状が分かりにくいことから隠れ貧血になっていることが多い。そこで、「おやこほけんしつ」では、貧血検査と体組成の検査を最新機器を使って実施します。貧血検査では、手の指に測定器を取り付けるだけでヘモグロビン量が測れます。採血しないので小さなお子さまも安心です。体組成の検査では、除脂肪量、筋肉量、基礎代謝量などを測定。結果から、1対1の個別カウンセリングで母子の健康やお子さまの成長のアドバイスをさせていただきます。

崎山実は先日のプレ測定会で、私の妻と子どもも体験させていただきました。うちの子の場合、エネルギー不足という結果に。とはいえ、少食なのでたくさん食べるのは難しい状況でした。それに対して、量ではなく何を食べればいいかを具体的にお話してくれて、早速実行しています。生活の中ですぐに取り入れられるアドバイスをしてくれるのがありがたいですね。

 日本初の試みとして、学習塾×医療チームで学力向上への新たな可能性を探る

司会今回「おやこほけんしつ」で連携するに至った経緯をお聞かせください。

崎山寺小屋グループでは創業以来、学力を上げるために社内では「診断・指導・対話」の円滑なサイクルを大切にしてきました。数ある学習塾の中から、寺小屋グループに通塾する選択をされた方は、お子さまの学力や将来の可能性を最大限に引き出したいという希望をお持ちです。その願いを叶えるためにも、子どもたちだけでなく、受験生のお母さんたちにも何らかのサポートができないか、との思いから「受験メシシリーズ」を提供してきました。そして45周年を機に、さらに一歩踏み込んで、子どもたちと保護者の皆さまをサポートしていきたいと考えていたところ、愛媛大学の猪川先生とのご縁で、ラブテリをご紹介いただいたわけです。私たちは「こうやって勉強した方がいい」という指導はできます。しかし、子どもに元気がない、やる気が感じられないと気づいても、そこから先へなかなか踏み込めないこともあります。現場感覚として、食事や睡眠が大事と感じていても、具体的にどうすればいいか模索していたところで、今回、日本初の取り組みとして、学習塾と医療チームによる連携をスタートさせることになりました。

細川ラブテリも母子健康推進活動を実施する上で、子どもの成長に関してもさまざまな課題に取り組んできました。猪川もプロジェクトメンバーの一員です。これまでの研究から、貧血と集中力欠如の相関関係が科学的に明らかであるように、学力と貧血の相関関係を研究し、国にも提言していきたいと考えていました。母子貧血の問題解決に向けて特に重要なのは、東京や大阪などの大都市よりも地方での取り組みです。現在の日本の出生数を支えているのは、地方の女性です。将来母親になる地方女性に大切な情報を届けていかなくてはいけない。そんな考えの中、愛媛を中心に教育向上に熱心に取り組んでこられた寺小屋グループとご縁をいただき、今回の提携につながったわけです。「教育活動を通して人と地域の未来を照らす」という寺小屋グループの理念は、私たちの活動目的と大いに通じるものがあると思っています。

 夢を叶える!寺小屋「おやこほけんしつ」を愛媛全域に広げたい

司会:最後に、今後の活動計画について教えてください。

崎山:夢を叶える!寺小屋「おやこほけんしつ」として、愛媛県全域で活動を共にしていきたいと思っています。私たちのことをもっと知っていただくため、例えば大型のショッピングセンターのようなところとコラボして、街の皆さんに親子で体験していただくことができればいいですね。

細川:まずは、寺小屋グループの塾生さんへの測定会を実施しその結果をもとにしたカウンセリングをさせていただきます。さらに、そこで得たデータをもとに、学力と健康状態の研究を進めていきます。我々にできることは、子どもたちの「ああなりたい」「こうなりたい」という夢を叶えるための体をしっかりとつくってあげることです。体をつくるためには、本人が食事・運動・睡眠を整える力を身につけなくてはなりません。そのことを保護者と本人の両方が学ぶことによって、正しい生活習慣を獲得し、学力でも本来のポテンシャルが発揮でき、将来的には社会で生きる力を身につけることができるはずです。私たちが目指すのは、自らの力で健康をデザインしていく教育。寺小屋グループで学ぶ皆さんが学問を通じてそれぞれの夢を叶えていくために、医療面と栄養面で必要な成長支援をしっかりと行っていきたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。

崎山:こちらこそよろしくお願いします。将来的には、県内の企業や学校に私たちの活動に共感してくれる仲間を増やし、愛媛県の教育を変えるきっかけになればと願っています。46年目からの寺小屋グループは、月謝相応のサービスを提供する“当たり前”の塾から、子どもたちの未来を照らす学習塾へと生まれ変わります。通塾されるすべての生徒さん、保護者の皆さまに「寺小屋で良かった」と思っていただけるように、社員スタッフ一同、学び挑戦し続けます。皆さまのご理解ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

司会:本日はありがとうございました。

ラブテリ×寺小屋グループ対談

寺小屋グループ × ラブテリ
学力向上の新たな可能性!
学習塾と医療チームが
タッグを組んだ新たな試み
「おやこほけんしつ」がスタート!


1979年に創業した寺小屋グループは、おかげさまで創業45周年を迎えました。創業以来、愛媛県の子どもたちの学力を伸ばすため、社内研修の実践や新学習システムの導入など、教育環境の変化に合わせた改革を進めてきました。一方で、共働き世帯の数はこの45年間で増加し続け、特にお母さんたちの負担が大きくなっています。寺小屋グループは、全国で母子の健康を支える活動を続けているLuvtelli(ラブテリ)の想いに共感し、2024年度から新たな試みとして寺小屋「おやこほけんしつ」をスタートします。この対談では、双方の代表が愛媛県の子どもたちの学力向上へ、新たな可能性や夢を語ります。

教育活動を通して人と地域の未来を照らす~寺小屋グループのこれから

司会はじめに寺小屋グループ創業45周年を迎えるにあたり、ご挨拶をお願いします。

崎山まずは、これまで支えてくださった生徒さん、保護者の皆さま、関係企業の皆さまに御礼申し上げます。弊社は1979年に松山で第一号の教場を中学生を指導する塾としてスタートしました。当時は、第二次オイルショックの頃で、インベーダーゲームが大流行。教育業界では共通一次試験が始まった頃でした。1980年代からは日本の人口増加や好景気に合わせ学習塾の需要が増大し、寺小屋グループも対象学年や拠点エリアを広げてきました。現在は主に愛媛県を拠点に、小学1年生から高校3年生までの学習塾事業を展開。近年では、AIを活用した学習システムや英語を使いこなす力、プログラミングなど、時代の要請に応じた新たな取り組みを実践しています。創業当時から現在まで「教育活動を通して人と地域の未来を照らす」という理念に変わりはありません。私たちを選んでくださった皆さまに、当たり前のサービスとして短期的には学力の向上や志望校合格をサポートし、中長期的には社会で生きる力を身につけていただく。そこにどう寄り添っていくかが大事だと考え、そのために良いと思うことは積極的に取り入れていきたいと思っています。

実体験から予防医学に興味を持ち渡米、母子健康の団体ラブテリを発足

司会ラブテリについて教えていただけますか。

細川私ども一般社団法人ラブテリトウキョウ&ニューヨーク通称ラブテリは、2009年にアメリカと日本の医療の専門家をチームにして立ち上げた団体です。もともとは、私が10代後半に母を末期ガンで亡くしたことから予防医療に興味を持ち、渡米したのがきっかけです。International Nutrition Supplement Adviser.の資格を取得後、健康食品会社で開発・広報部に所属。アメリカで「DOHaD-生活習慣病胎児起源説」と「最初の1000日」を知り、母子健康推進活動を目的としたプロジェクトチームを発足することを決意しました。現在は、ドクターや管理栄養士などの専門家が40名以上所属し、母親と子どもの健康に関するさまざまな課題解決に取り組んでいます。

司会アメリカで学ばれたという「DOHaD―生活習慣病胎児発症説」と「最初の1000日」とは、どういうものなのでしょう。

細川「DOHaD―生活習慣病胎児発症説」とは、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の原因をたどっていくと、妊娠中の母体の栄養状態にまでさかのぼるというもの。小さく生まれた子は将来的に糖尿病や心臓病、高血圧などの罹患率が高いということが研究で裏付けされています。また、低出生体重児の原因のひとつが女性の痩せ問題です。30年前にアメリカの教授から「この問題でいちばん深刻なのが日本だ」という話を聞いて、自分の国は豊かで女性も健康だと思っていたので非常にショックを受けました。
「最初の1000日」とは、脳の劇的なサイズアップが起こる時期であり、それにともない将来の学力、進学率、ひいては経済所得の基盤。そして、国の将来のGDPまでもが、妊娠中から2歳までの1000日間の栄養状態などに影響を受けるというものです。予防医療をやるのであれば、そこにしっかりと焦点を当てることが根本的解決につながるだろうと、母子の健康をサポートするラブテリを発足したわけです。

女性と子どもの健康増進を叶える3つの事業「研究・啓蒙・協業」

司会ラブテリでは、具体的にどのような活動をされているのでしょう。

細川3つの事業を柱に活動しています。ひとつめは、研究。女性と次世代の健康に関する共同研究を複数手掛け、学会や論文、レポートで発表しています。妊娠適齢期の女性がどういう健康課題を抱えているのか、子どもたちがどのくらい栄養失調になっているのかなどのテーマを大学などと一緒に共同研究しています。ふたつめが啓蒙。女性と子どもたちに、自らの健康について理解し考えてもらい、病気にならない生き方を自分の力でつくってほしいと、食事・運動・睡眠に関する整え方を啓蒙・啓発しています。今回の寺小屋「おやこほけんしつ」もこの活動の一環です。三番目が企業や自治体との協業。研究データを解析し母子が抱えている健康リスクを還元することで、必要なソリューションを開発する事業です。全国の大企業や自治体と商品開発やアプリ開発などを行っています。愛媛の企業では、ユニ・チャームの生理用品「ソフィ」の生理管理アプリに開発協力し、生理のビッグデータ化による女性のQOL向上を目指しています。

研究の成果から見えてきた深刻な母子貧血問題

司会ひとつめの事業の柱「研究」の成果は、どのようなものがありますか。

細川順天堂大学との「卵巣年齢共同研究」、女子栄養大学との「高崎妊婦共同研究」はじめ、働く女性の健康課題をまとめた「働き女子1000名白書」、子育て世帯3000世帯を対象に実施した「こどもすくよか白書」などを発表し、母子が抱える健康課題を顕在化してきました。その中で、私たちが新たな社会問題と認識しているのが母子貧血です。日本では、近年スリムな体型に憧れる女性が増え、やせ型が多く貧血になりやすい傾向に。特に、妊娠中に貧血状態であると、早産や低出生体重児などのリスクが高くなります。「最初の1000日」の研究結果からもわかるように、お母さんの貧血は赤ちゃんにも影響を与えます。

司会その他、現在進めている研究があれば教えてください。

猪川現在、自治体と共同して進めている例としては、熊本県長洲町の乳幼児健診で血中のヘモグロビン濃度を採血なしに測定できる機械を取り入れています。この測定結果から子どもの貧血の実態を把握したり、長期的に測定機会を作ることで貧血の割合の変化を見たり、子どもの貧血の原因を探るといったプロジェクトを、愛媛大学との共同研究として実施予定です。また、ヘモグロビン濃度を測定して貧血の可能性が高いと分かった子どもに対して、保護者を含めた効果的な介入方法を検討したり、企業に鉄が多く含まれる食品の提供を依頼するなど、産学官が連携してこどもの健康を支援するシステムを構築していく予定です。
そのほか、香川県善通寺市の国立病院機構「四国こどもとおとなの医療センター」では多数の小児科医の協力を得て、子どものビタミンD欠乏を採血なしにスクリーニングできる質問票を国内で初めて開発する研究を進めています。ビタミンDはカルシウムの吸収や骨の形成に重要な働きをするため、欠乏すると成長期の子どもでは身長の伸びに影響し、骨折しやすくなるなどとても大切な栄養素です。私は研究者ですので、これらの研究を全国に拡大して進め、研究成果を日本栄養士会や日本公衆衛生学会やメディアを通じて広く知っていただき、子どもの健康のための取り組みを全国に広げる一歩になればと願っています。

「測って、知って、学ぶ」がコンセプトの「おやこほけんしつ」

司会啓蒙事業のひとつ「おやこほけんしつ」で目指していることを教えてください。

細川私どもの保健室にはいくつか種類があり、女性を対象にした女性向け保健室、企業内での保健室、そして「おやこほけんしつ」です。どれも自らの健康状態を「測って、知って、学ぶ」がコンセプト。これまでも学校や企業などの健康診断で測る機会はありましたが、女性や子どもという視点で十分にフィードバックされているかというと、なかなか難しい。実は、これまでの研究で0歳〜5歳までの子どもで貧血リスクに該当した子どもは12%いました。貧血リスクの高い子どもは少食で体力がない傾向があり、集中力や理解力の低下を引き起こすなど学力にも関係していることが分かっています。しかも、症状が分かりにくいことから隠れ貧血になっていることが多い。そこで、「おやこほけんしつ」では、貧血検査と体組成の検査を最新機器を使って実施します。貧血検査では、手の指に測定器を取り付けるだけでヘモグロビン量が測れます。採血しないので小さなお子さまも安心です。体組成の検査では、除脂肪量、筋肉量、基礎代謝量などを測定。結果から、1対1の個別カウンセリングで母子の健康やお子さまの成長のアドバイスをさせていただきます。

崎山実は先日のプレ測定会で、私の妻と子どもも体験させていただきました。うちの子の場合、エネルギー不足という結果に。とはいえ、少食なのでたくさん食べるのは難しい状況でした。それに対して、量ではなく何を食べればいいかを具体的にお話してくれて、早速実行しています。生活の中ですぐに取り入れられるアドバイスをしてくれるのがありがたいですね。

日本初の試みとして、学習塾×医療チームで学力向上への新たな可能性を探る

司会今回「おやこほけんしつ」で連携するに至った経緯をお聞かせください。

崎山寺小屋グループでは創業以来、学力を上げるために社内では「診断・指導・対話」の円滑なサイクルを大切にしてきました。数ある学習塾の中から、寺小屋グループに通塾する選択をされた方は、お子さまの学力や将来の可能性を最大限に引き出したいという希望をお持ちです。その願いを叶えるためにも、子どもたちだけでなく、受験生のお母さんたちにも何らかのサポートができないか、との思いから「受験メシシリーズ」を提供してきました。そして45周年を機に、さらに一歩踏み込んで、子どもたちと保護者の皆さまをサポートしていきたいと考えていたところ、愛媛大学の猪川先生とのご縁で、ラブテリをご紹介いただいたわけです。私たちは「こうやって勉強した方がいい」という指導はできます。しかし、子どもに元気がない、やる気が感じられないと気づいても、そこから先へなかなか踏み込めないこともあります。現場感覚として、食事や睡眠が大事と感じていても、具体的にどうすればいいか模索していたところで、今回、日本初の取り組みとして、学習塾と医療チームによる連携をスタートさせることになりました。

細川ラブテリも母子健康推進活動を実施する上で、子どもの成長に関してもさまざまな課題に取り組んできました。猪川もプロジェクトメンバーの一員です。これまでの研究から貧血と集中力欠如の相関関係が科学的に明らかであるように、学力と貧血の相関関係を研究し、国にも提言していきたいと考えていました。母子貧血の問題解決に向けて特に重要なのは、東京や大阪などの大都市よりも地方での取り組みです。現在の日本の出生数を支えているのは、地方の女性です。将来母親になる地方女性に大切な情報を届けていかなくてはいけない。そんな考えの中、愛媛を中心に教育向上に熱心に取り組んでこられた寺小屋グループとご縁をいただき、今回の提携につながったわけです。「教育活動を通して人と地域の未来を照らす」という寺小屋グループの理念は、私たちの活動目的と大いに通じるものがあると思っています。

夢を叶える!寺小屋「おやこほけんしつ」を愛媛全域に広げたい

司会:最後に、今後の活動計画について教えてください。

崎山:夢を叶える!寺小屋「おやこほけんしつ」として、愛媛県全域で活動を共にしていきたいと思っています。私たちのことをもっと知っていただくため、例えば大型のショッピングセンターのようなところとコラボして、街の皆さんに親子で体験していただくことができればいいですね。

細川:まずは、寺小屋グループの塾生さんへの測定会を実施しその結果をもとにしたカウンセリングをさせていただきます。さらに、そこで得たデータをもとに、学力と健康状態の研究を進めていきます。我々にできることは、子どもたちの「ああなりたい」「こうなりたい」という夢を叶えるための体をしっかりとつくってあげることです。体をつくるためには、本人が食事・運動・睡眠を整える力を身につけなくてはなりません。そのことを保護者と本人の両方が学ぶことによって、正しい生活習慣を獲得し、学力でも本来のポテンシャルが発揮でき、将来的には社会で生きる力を身につけることができるはずです。私たちが目指すのは、自らの力で健康をデザインしていく教育。寺小屋グループで学ぶ皆さんが学問を通じてそれぞれの夢を叶えていくために、医療面と栄養面で必要な成長支援をしっかりと行っていきたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。

崎山:こちらこそよろしくお願いします。将来的には、県内の企業や学校に私たちの活動に共感してくれる仲間を増やし、愛媛県の教育を変えるきっかけになればと願っています。46年目からの寺小屋グループは、月謝相応のサービスを提供する“当たり前”の塾から、子どもたちの未来を照らす学習塾へと生まれ変わります。通塾されるすべての生徒さん、保護者の皆さまに「寺小屋で良かった」と思っていただけるように、社員スタッフ一同、学び挑戦し続けます。皆さまのご理解ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

司会:本日はありがとうございました。